(http://frdmoptn.exblog.jp/2347875/より転載)
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深夜、石狩浜へ。
東の空低くにかかる赤い月と、目の前に広がる黒い海。遠くに灯る漁火らしき白い光が、水面を覆う低い雲を仄かに照らし出している。そのおかげでかろうじて見定めることができる、海と空の曖昧な境界。左前方、斜め対岸に視認する小樽の街火。波は極めて穏やかで、風もそれほど強くはなかった。
週末のせいか、夜とはいえ意外に人が多い。バーベキューをやるグループ、花火に興じる若者、浜辺に寄り添うカップル。煌々と明かりを灯し営業をつづける海の家は、大音量のサウンドを撒き散らすクラブと化している。しかし背後に控える漆黒の海が、それらのエネルギーを生成の傍らから常に暗闇の彼方へ葬り去っている、そんな夜のビーチ。
内陸都市としては日本最大の人口を抱える札幌市は、ここから遥か20キロの奥に位置する。だが夜のビーチに展開するこの"賑わい"もまた、あるいはその190余万の都市活動の縁部としてあるのか。おそらく都市のいくつかの活動波が、もはや後背地が存在しないこの場所を最後の、または唯一の現出点として立ち上がっていることは間違いない。
そんなことを頭の片隅で思い巡らしながら、ビーチを北進する。灯台のあたりまで来ると人影はほとんどなくなり、静かに明滅する光があたりを明かしているだけとなる。曖昧な闇を無言で切る閃光と、吹きやむことのない穏やかな海風が演出する深夜の静寂。それをするどく切り裂くロケット花火が、時折どこか遠くで打ちあがる。
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